PRESIDENT BLOG

2020.06.15 経営のこと

有意注意で判断力を磨く

中村天風さんという哲人がいらっしゃいます。もうずっと昔に亡くなった方なんですが、政財界に大きな影響を与えた方です。古くは、東郷平八郎、原敬、松下幸之助、稲盛和夫、最近でも日本電産の永守会長、大谷翔平などが影響を受けていると聞いたことがあります。

元々、稲盛さんからはいっていって、稲盛さんが影響を受けた著書として、色々な方の著書を読んだのですが、この中村天風さんが、自分の今の思想に大きな影響を与えてくれました。稲盛さんも中村天風さんのことを恩人といってられました。

さて、中村天風さんの思想は大変シンプルで、私は大きくわけて2つの心の使い方に集約されると思っています。一つは、積極的思考、もう一つは、集中ということです。積極的思考については、色々な方法を我々に教えてくれていますが、集中については、有意注意という方法を説いてられるだけです。

ですが、この有意注意というのは深い意味があるんですね。それを少し話したいと思います。というのも、この有意注意をミスを少なくするというような狭い意味でとらえている方が多いように見受けられるからです。もちろん、そういう側面もあるんですが、それ以上に大事なのは、判断力に関わってくるということなんです。

これまた、中村天風さんの受け売りですが、人間の判断力は深く広くあるということが基本です。広くとは、それを決定することで、社内の色々な部署でどのような影響があるか?とか、顧客の関係、協力先との関係はどうか?日本全国、世界的にどうか?というようなこと、深くは、歴史的にみてどうか?将来に向けてどうか?人間の深層心理、人間の本質としてどうか?とか。広く深く瞬間に考え総合的に決断を下していかないといけません。

しかし、ここで問題になるのは、普段から有意注意の生活を送っていないと判断が浅く狭くなってしまうという恐ろしさがあるということなんです。本人は、これは今要所だから、深く広く考えないといけないと思って、そうしているつもりなんですが、日常の些細なことで有意注意をしていないと本人がわからないうちに思考が狭く浅くなっているのです。これは、人間の持つ、習慣というものが影響しています。

ですから、この有意注意は、逆の考えを取ります。人間の思考は興味というものと連動します。興味の持っているものはほっておいても集中するのですが、興味を持てないと集中力を欠き、放心の状態になります。ですので、興味を持っていないものを強制的に興味を持つようにしていく。これが有意注意を習慣にするやり方です。興味を持ってない以外も、何回もやっていて無意識になりそうなものとかも同様です。

有意注意は、無意識というのを否定します。必ずどんなものでも意をもって意を注ぐことを習慣づける
それが、有意注意になります。例えば、ものを忘れたりなどは、有意注意ができていない証拠ですので、改めなければなりません。

特に最終判断者である、経営トップは、この有意注意ができていないといけません。後ろがいないわけですから。でも、これは積極的と同じで、完璧にするのは難しいです。日々、訓練することで、徐々にそうなっていくということで不断の努力が必要です。昔稲盛さんが、分刻みで億単位の大事な判断をされていくと聞いたのですが、それも、この有意注意が訓練された状態だからだと思います。

ある人が信頼と信用は違うと言っていました。信頼は、その人の人間性、善意など、信用は、仕事ぶり。それを聞いてなるほどと思いました。信頼はできるが信用はできないということは会社では常にあります。チームなので、人の足りないものは補い合わなければいけないので、それはそれでいいと思いますが、でも、やはり人の上に立つものは信用もされないといけないと思います。

ですが、そんな細かいことまで大したことがないので、うるさくいわなくてもいいじゃないか、成果さえ上げればいいじゃないかとか、それは、この有意注意の本質を理解されていないのです。フィロソフィに誠実でもないし、謙虚でもないと思います。

今ある会社の状況は、昔からの判断の積み重ねです。有意注意を軽く考えずに取り組んでいただきたいと思っています。