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PROJECTインタビュー

ブランディング 事例インタビュー タキイ種苗様 「ファイトリッチ」ブランディング

「機能性」の壁を越え、消費者の心に届くブランドへ。タキイ種苗『ファイトリッチ』構築の軌跡

ブランディング 事例インタビュー タキイ種苗様 「ファイトリッチ」ブランディング
CLIENT
タキイ種苗株式会社 様
MEMBER
タキイ種苗株式会社: 渋谷様、林中様、山崎様
シュンビン株式会社: 廣瀨(プロデューサー)、松下(デザイナー)、吉田(Webディレクター)
WEB SITE
https://phytorich.jp/ 
AREA
京都府

はじめに

老舗企業の次世代を担う後継者や、新たな市場を切り拓こうとする新規事業責任者にとって、「自社商品の真の価値をどう定義し、誰に届けるか」は、企業の命運を分ける極めて重要な問いです。
今回ご紹介するのは、創業190年を超える日本の老舗種苗メーカー、タキイ種苗株式会社様の機能性成分を豊富に含むおいしい健康野菜シリーズ「ファイトリッチ」のブランディングプロジェクト。 「機能性」というスペックの訴求に限界を感じていたチームが、いかにして消費者の感情を動かす「物語」を見出したのか。デザイナー・Webディレクターというクリエイター側の視点を大幅に強化し、その創造的な葛藤と成功の舞台裏を詳しく紐解きます。

「機能性」という武器が、いつの間にか足かせになっていた

シュンビン廣瀨:
「ファイトリッチ」は非常に優れた商品群ですが、ブランディング前はどのような課題を抱えていたのでしょうか。
渋谷氏:
「ファイトリッチ」は、同じ量を食べても体によいとされる成分が多く含まれる野菜を作りたい、という純粋な想いから始まりました。しかし、これまでの販促は「機能性表示食品」という硬い枠組みに頼りすぎていたんです。
「体によい」というスペックを前面に出しても、それが直接生産者さんの利益や、消費者の皆さんの「食べたい!」という本能的な欲求に結びついていない実感がありました。いわば、科学的根拠という狭い領域に閉じ込められていたような状態でした。
シュンビン廣瀨:
最初にお話を伺ったとき、野菜のタネから流通までを真剣に考えるタキイ種苗様の姿勢に感銘を受けると同時に、その「社会貢献度の高さ」がデザインで十分に表現しきれていないもどかしさを感じました。業界のパイオニアだからこそ、既存の枠を超えた新しい「事業承継」ならぬ「事業進化」が必要だと直感しましたね。

クリエイティブが導き出した「禁じ手」のコンセプト

シュンビン松下:
今回の​プロジェクトで​最大の​転換点と​なったのは、​ブランドコンセプトの​策定でした。​タキイ種苗様との​ブランドワークショップで​浮かび​上がったのは、​「いいわけ野菜」と​いう​コンセプトです。​
他にも​候補は​ありましたが、​「いいわけ野菜」と​いう​コンセプトには​どういった​印象を​持たれましたか?​
渋谷氏:
正直に​言いましょう​(笑)。​私は​最初、​この​案に​反対しました。​「いいわけ」という​ネガティブな​言葉を、会社の上層部が好意的にとらないのではと思ったからです。
シュンビン松下:
渋谷様の​懸念は​もっともでした。​実際、​シュンビン社内でも​この​コンセプトに​関しては​様々な​意見が​出ました。​しかし、​「いいわけ」と​いう​言葉には​人間の​気持ちに​寄り添う​温かさが​ある。​
「機能性」と​いう​単なる​「スペック」の​提示から、​毎日の​食生活の​「言い訳」を、​
「良い​理由​(わけ)」に​昇華し、​肯定してくれる​存在へと​​立ち位置を​シフトさせる。​その​ためには、​最終的には、​少し​尖った​表現が​必要だったんです。​
渋谷氏:
最後は​ワークショップの​メンバーの多くが​「これ、​ええやん!」となり、その案で行くことになりました。​
最終的には​ターゲットへ​向けて​今までに​ない​アプローチを​するなら、​この​コンセプトが​ベストと​いう​方向で​まとまっていきました。​でも、​その​「尖り」が​あったから​こそ、​社長に​対しても​「これで​いきたいと思います」と​言えたのだと​思います。​
シュンビン松下:
コンセプト決定後、​タグラインや​キービジュアルなどの​制作は、​時間を​かけて​やりとりさせていただきました。​
野菜の​美しさを​際立たせる​ビジュアルと​組み合わせる​ことで、​「これならいける」と​いう​確信を​共有できた​ことは​とても​印象深かったです。​

徹底した取材で見出した、Webに宿すべき「体温」

シュンビン吉田:
Webサイトの制作においても、私たちは「情報の整理」だけにとどまらない、深いレベルでの共感を目指しました。一般の方にとって馴染みの薄い「機能性成分の豊富な野菜」という存在を、どうやって日常の食卓にまで引き寄せるかが私の使命でした。
そこで、全国の生産者の方々へ直接インタビューを行いました。土にまみれながら、「次世代に本当によいものを残したい」と語る生産者様の眼差しや、野菜への深い愛情。その「体温」をいかにデジタル上で再現するか。
林中氏:
吉田さんのインタビューは、私たちも気づいていなかった「ファイトリッチの魅力」を掘り下げてくれました。質問が​鋭くて、​生産者様の​答えを​お聞きしている​うちに自分たちの仕事の価値を再認識させられたというか。
シュンビン吉田:
Webは単なるパンフレットではなく、訪れた人が「この野菜を育てている人はどんな人だろう」「なぜこんなに色が鮮やかなんだろう」と、好奇心を掻き立てられる仕掛けがあるべきだと考えています。
たとえば、野菜の切り口の鮮やかさや、生産者様の力強い手の写真を大胆に配置することで、「生命力」を視覚的に訴求しました。情報の正しさを保ちつつ、親しみやすさを両立させる。このバランスを追求することで、既存の「種苗メーカーのサイト」という殻を破ることができたのかもしれません。

変化は「社内の視線」と「未来の担い手」にも及んだ

山崎氏:
産休から戻ってきたとき、新しくなったブランドサイトを見て目を奪われました。これまでは「作る側」の理屈が先行していましたが、新しいデザインは野菜の「ビジュアル感」が凄まじくて。消費者目線で「食べてみたい」と思わせる力が宿っていました。
林中氏:
意外な収獲だったのは採用面です。採用担当者から就職活動中の学生さんに「あのYouTube動画見ました」「サイトがおしゃれで驚きました」と言われることが増えたと聞きました。老舗企業=保守的というイメージを払拭し、先進的なブランドとしての認知が広がっているのを実感します。
渋谷氏:
YouTube施策も大きかったですね。著名な方を起用し、シュンビンさんに徹底的にサポートしていただいたことで、社内の「ファイトリッチ」に対する視線がガラリと変わりました。「自分たちはこんなに価値のあるものを作っているんだ」という気持ちが、社員の中に芽生えた。これは、広告宣伝にお金をかけるよりも価値のある、継続的な「資産」だと感じました。

迷っている後継ぎ・新規事業経営者へのメッセージ

シュンビン廣瀨:
最後に、ブランドの構築や新規事業で悩まれている方々へアドバイスをお願いします。
渋谷氏:
自社だけで考えていると、どうしても「主観」という沼から抜け出せません。シュンビンさんのような、我々が持っていない視点を持ち、かつ泥臭く現場まで入り込んでくれるパートナーの存在は貴重だと思います。
まずは、言語化できていないモヤモヤをそのままぶつけてみることをお勧めします。シュンビンさんは、その絡まった糸を解き、進むべき「スタートライン」を鮮明に描き出してくれるはずです。

まとめ

ブランドデザインは、企業の「誇り」を再定義する投資

タキイ種苗様の事例は、単なるデザインの刷新ではありません。それは、社内のバラバラだった想いを一つの「コンセプト」で繋ぎ、生産者から消費者、そして未来の社員までをも惹きつける「共通言語」を作るプロセスでした。

「良いものは作っている。でも、その良さが正しく伝わっていない」

そう感じているなら、それはブランドが持つ「本当の理由」を掘り起こし、デザインという力で命を吹き込む絶好のタイミングかもしれません。

 

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