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株式会社杵の川 リブランディング×店舗改装

よか場所とよか人を育む『杵の川蔵元ファクトリー よかよか』とは

株式会社杵の川 リブランディング×店舗改装

複数ブランドの融合の蔵、進化への始まり
杵の川様は、かつて4社の合併で生まれた複数のブランドを持つ、長崎県諫早市で180年続く酒造メーカー様です。
合併時に誕生した“杵の川”というブランドと以前から継承している各ブランドがあり、ブランドの位置づけが
社内的にも混乱している状態が続いていました。
また、直売所も営業されていましたが、直売所玄関は事務所と兼用となっており、来店されたお客様を困惑させていました。
そこで、社名でもある「杵の川」をリブランディングするためブランド構築ワークショップを開き、コーポレートロゴデザイン、
ラベルデザイン、販促物デザイン、また店舗デザインとトータルでご提案させていただきました。
杵の川の新たな一面、新章へ
まずはじめに行われたブランド構築ワークショップでは、地元に愛される蔵であり続けるために
「よか人とよか酒を育む蔵」がミッションとして定められました。「よか人とよか酒を育む蔵」を基に
商品のラベルに統一感を持たせるべく、「杵の川」の書は、地元の書家に新しく書いて頂き、諫早と長崎の名所「眼鏡橋」を
メインモチーフにしたコーポレートロゴを配置し、パターンを展開しました。
事務所と兼用となりお客様を困惑させていた直売所は、店舗玄関の入口すぐに、大きな壁を造作し、回廊のような
通路にすることによって、ワクワク感を演出。長崎出島やポルトガルといった海外文化を創造できるように
ステンドグラスを埋め込みデザインしました。醸造工程を説明する写真パネルや、大きな木彫看板、醸造用試作機など、
この蔵にしかない古道具を店舗ディスプレイとして活用。なかでも、旅館より譲り受けた襖一面に貼り付けられた
眼鏡橋の8枚のモノクロ写真は、蔵の通路にひっそりと立てかけられていましたが、歴史資料館のように設置。
販売スペースもゆとりを持たせ、照度を落とし落ち着いた空間へ。
カウンターなど材料の一部は、前の店舗で使っていたものを再生活用しました。
伝統を革新につなげる明確なブランドイメージ
明確なブランドイメージの確立により、社員皆様の士気が向上。これまで以上に想いを共有することが強まり、
製造面では質の高いお酒が生み出され、令和5年酒類鑑評会 吟醸酒の部金賞受賞など多くの賞を獲得されています。
ラベルを一新し、そのデザインに込められた想いを明確に伝えることによって、
より自信を持った提案へと変化し、社員のモチベーションを高め、採用面にも好影響を与えています。
ほぼ土日に集中していた来店客は、平日にもお越しいただけるようになり、比較的若いお客様が増えました。
社長様からは『改装後はお客様との触れ合う機会が増え、事務所内の活気や明るさが目立ち、事務的な考え方から
クリエイティブな考えへと変わってきています。』という嬉しいお声をいただきました。
コロナ禍をきっかけにして動き出した店舗改装
リブランディングによってブランドの明確な方向性は、社員皆様の士気を高め、共有のビジョンを形成しました。
しかし、敷地と建物の大きさが課題として残りました。品質の追求により、出荷数を縮小された杵の川様。時代の流れと共に、
日本酒出荷最盛期を想定して作られた敷地と建物に空きスペースが多くなってしまい、事務所、倉庫、酒蔵と
大きく3箇所に離れていた為、作業効率と社内全体のコミュニケーションに問題がありました。
2021年、コロナ禍をきっかけに始まった事業再構築補助金を活用し、新たに店舗改装と、
観光客をターゲットにした新規事業立ち上げへと踏み出されました。
全長93.6mの革新的空間、みんなが集えるファクトリーへ
事務所、製造ライン、直売所など別々になってしまっていた設備。
それらを全長93.6mある瓶詰め工場兼倉庫の中へ集約し、スペースの有効活用をしました。
杵の川様の人柄の良さを生かし、全てが見渡せるような、動きやすく安全に配慮された動線が考えられた
開放感あるシームレスな空間を設計。瓶詰めの製造現場を見学することができ、さらには、杵の川様の名物となる
長崎県で唯一の酒樽職人さんの樽づくりの実演スペースも設け、その側のバーカウンター「角打ち彌八」では、
季節限定の日本酒や生酒の試飲、長崎の食との相性を体感できます。
売り場では日本酒だけでなく、長崎の食をテーマにセレクトされた魅力的な商品なども陳列されています。
以前の店舗で使用されていた古道具や、改装前まで活躍していた大型の洗瓶機をオブジェとして展示。当初の計画では
洗瓶機は廃棄予定でしたが、蔵元の思入れもあり、オブジェとして展示される計画に変更されました。
そんな思いのこもった洗瓶機を眺めながら、杵の川様の歴史を楽しんでいただける空間を演出。
社員皆様の活気溢れる場になるよう、明るく楽しい気分にさせてくれるようなイメージの黄色に塗装され、
ひと際存在感を放っています。
発酵観光はじまる!日本酒の日に生まれ変わった『杵の川蔵元ファクトリー よかよか』
杵の川蔵元ファクトリー よかよかは、2023年10月1日・日本酒の日にOPENしました。
「発酵観光はじまる!」をキーワードに生まれ変わり、オープニングフェアも開催され、多くのお客様が来店されました。
毎月様々なイベントが企画され、良か人と良か酒を育む酒蔵として、益々の盛り上がりを見せています。
リブランディングから店舗改装と携わらせていただき、新店舗の改装に行き着くまで約7年、多くのハードルがありました。
リブランディングや新規事業には、不安や葛藤がつきものですが、
デザインクリエイティブの力で、売上を伸ばすことが私たちのミッションです。
酒蔵に留まらず、地域の輪を広げる杵の川らしさを一緒に作り上げていくため、今後も引き続きお手伝いさせていただきます。
PRODUCER:
Shinsuke Kitamori
PLANNER:
Kenji Nakajima
DESIGNER:
Yuri Ikehara
ARCHITECTURAL DESIGNER:
Osamu Tsuchino